忍法帖の世界①~鍵屋の辻
鍵屋の辻といえば、「魔界転生」において柳生十兵衛と荒木又右衛門がその雌雄を決した場所ではありますが、もともと荒木が義弟の渡辺数馬の助太刀をして、三十数人の大集団を相手に死闘を演じ、みごと仇討ちの本懐を遂げた場所として有名です。
初めてここを訪れたのは、かれこれ10年以上前のことになりますか。その時も、もちろん「魔界転生」の舞台のひとつということを意識してはいたのですが、 まさか3度もくることになろうとは思いもしませんでした(笑)。この場所は、歴史好きの人には名前はそれなりに通っているところだとは思いますが、伊賀越えの復讐の記念碑と、資料館がひっそりとあるだけで、普段静かな佇まいを見せているところが居心地が良くて好きです。
とはいえ、伊賀越資料館のある公園と同じ敷地にある数馬茶屋さんには、ドラマなどのロケ隊が来ることも多いようで、そのときは大いに賑わうのでしょうね。毎回お蕎麦をお勧めされますが、今回自分は腹が空いていなかったのでグリーンティーを、同行の彼女は蕨餅を注文して頂きました。
←自家製の蕨餅に彼女はウハウハです。私はきな粉自体は大好きなのですが、これはちょっと苦手で、味見は断念しました。
さて「魔界転生」では、鍵屋の辻の仇討ちは次のように描写されています。
【いわゆる伊賀越えの復讐は、たんにやや規模の大きい仇討ちであったというだけではなく、実はその背景に大名対旗本の対立という重っ苦しい時代相をもった事件であって、又右衛門は首尾よく義弟の助太刀をして敵河合又五郎を討ったものの、又五郎の後ろ盾となった旗本一派の再復讐を警戒してか、もとの主君大和郡山の松平家から、因州鳥取の池田家に籍を移した。
鳥取に移った又右衛門は、その仇討ちからわずか三年を経ずして、この世を去った。享年四十一歳という。】
大名対旗本の対立の結末の興味以外にも、他流試合をしないという柳生新陰流の剣士・荒木又右衛門が、別の流派の剣士とどう戦うのか、その去就にも民衆の耳目が注がれていたそうです。
【「これよ、上野はまだか」と、兵庫頭はきいた。
つきそっていた武士は、主君用の乗物からくる錯覚か、まるで頼宣そのひとに対するもののようにうやうやしく答えた。
「やがて、鍵屋の辻にさしかかりまする」
「鍵屋の辻。―――」
鍵屋の辻は、奈良方面から上野へ入る入り口にある。この街道はそこから二つの坂に分かれて、右へ上るのを塔世坂、左へ上るのを北谷道といい、塔世坂の角に万屋、北谷口の角に鍵屋という茶店があった。】
・・・・・・坂の写真を撮って来なかったのは残念至極ですが、確かにふたつの坂があり、比較的車の通りが多いのがここでいう北谷道で、この後、荒木に変装した十兵衛一派が塔世坂を、本当の荒木一派が北谷道を駆け下りてくる事になります。
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