”新宿”の柳生十兵衛
今年度の山田風太郎祭における、菊地秀行氏の講演の日も間近に迫ってきたので、久方ぶりに氏の著作でも先に読んでおこうか、という気になりました。
「せっかくの機会なので時代物にしよう」と物色していると、「幽王伝」というタイトルの作品が目に留まりました。副題に「陸奥(みちのく)剣鬼連合」とあります。なにやら柳生十兵衛も登場する様子で、「柳生忍法帖」のラストで北へ北へと走り去った十兵衛の姿に想いを馳せつつ、菊地氏が柳生友矩を主役に据えた作品を書いている事を知っていた事もあり、その友矩の兄貴を、「魔界都市ブルース」や「吸血鬼ハンターD」の菊地秀行がどのように描いているのか俄然興味が湧き、一も二もなく購入を決定しました。
―――帰ってから気付いたんですが、これって三巻完結の最終巻じゃん!
先に前二巻を読むべきか迷いましたが、最終的に柳生十兵衛が出てくるパートさえあれば充分、という結論に達し(病気か)、そのまま最終巻を読みきることにしました。
さて時代小説といえど、そこに展開されていたのはまさしく菊池秀行ワールドというようなもので、バンパイアや妖魔のようなストレートな表現の怪物こそ登場しないものの(もしかしたら”いた”のかもしれませんが・・・)、離魂病とやらに罹っている柳生刑部を筆頭に、死人の剣を振るう、その名も”冥府流”の剣鬼たち、謎多き薬屋の陣吾、あの世から戻ってきたかのような、妖艶な美女・おえん等、異形の面々が跋扈する世界で、柳生十兵衛はいたって普通の人間なのでした。
この作品の主人公・仏陀蒼介を別とすれば、柳生十兵衛は人間の中でも特に凄い、という位置づけで書かれており、豪剣をふるい敵対するものを大根のように斬って捨てるのですが、それでも奇人・妖剣の前では分が悪かったようで・・・・・・未読の方のために結末は伏せますが、これは”魔界都市”に放り込まれた柳生十兵衛の物語でもあったのでしょう。
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