伊勢波濤篇
「おうっ。・・・・・・これは、絶景!」
十兵衛のボキャブラリイが単純であるのと同様に、三池典太のボキャブラリイも単純である。
昼前には青岩渡寺に着くべく、夜半に自宅を出発したものの、高速道を降りてから適当な休憩場所が見つからないまま、熊野街道を走ることおよそ2時間、開いているのは釣具店ばかりというこの状況に(山中の釣具屋が0時を回っても営業していることに、まず驚きましたが)、さすがに疲労と眠気を感じ、途中の道の駅で仮眠をとることになりました。
――午前3時くらいに仮眠を取り始めて、それでも2時間寝ただけで目が覚める。嫁も起きたので、とりあえず先を急いで出発することに。少しばかり車を走らせると、海が見えてきました。暗い山中をずっと走ってきたので、海面に照り返す朝陽がまぶしく、とても清々しい気分になります。路肩に車を止めて、ふと思いつくことがひとつ。
「ここって、獅子岩の近くじゃないかなあ」
南紀のガイドブックで知ってはいても、そもそも今回の目的地には組み入れていなかったので、正確に場所を把握していたわけではないのですが、右手の岩場が気になって、ちょっと先に進んでみるか、ということになりました。
岩場の先に進むと、これがドンピシャで、ちょうど朝陽とのコントラストが目に染みて、思わず冒頭のような感想を抱くことになりました(・・・・・・本当の絶景は、これから目の当たりにすることになるのですが)。
←携帯画像なので画質はあまりよくありませんが、タイミング的に良い絵が撮れたと思います。
さて、この日に観たもうひとつの絶景はといえば。
【「あのおじちゃんたちも気がヘンになったんじゃない?」
「あんなもの、見るんじゃありません!」
と、おひろは叱った。そして、反対の海のほうを見て、
「それより、ごらん、あのおもしろい岩を――まるで橋の杭がならんでるようでしょ?」
と、指さした。
いかにも海の中に、高いもので十余丈、低いものでも三四丈の巨岩のむれが、或いは筍のごとく、或いは剣のごとく、或いは魚のごとく、或いは獣のごとく立ち、わだかまり、連列している。名高い橋杭岩の奇観だ。】
←南紀を回る前は、「なんだか、なんとか岩ってのが多いな」と思うだけで、ガイドの写真を観ても、とくに興味をそそられるものがなかったのですが、実物を目の前にしたら、これも単純な冒頭の台詞を吐く以外には、為す術がみつからないのでした。
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