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2011年2月

「悪の教典」

 貴志祐介著「悪の教典」読了。第1回山田風太郎賞受賞作です。

 上下巻を一気読みさせる力は確かに感じることができました(「クリムゾンの迷宮」も面白かったし)。ただ、この作品というか、作風または物語が、今後の山田風太郎賞のスタンダードになるかといったら、きっと、そういうことではないのでしょう。

 山田風太郎ファンなら、下巻P320でふと文字を追う眼が釘付けになるときがきます。

 あの一文だけで、山田風太郎賞を取るべく運命付けられていたのかも?

 貴志先生の他の作品では「ダークゾーン」と「天使の囀り」の方が評価が高いようですので、これを機にそちらのほうにも手を伸ばしてみようか、と考えています。

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「作者不詳」

 三津田信三著「作者不詳 ミステリ作家の読む本」上・下巻読了。

 前作にあたる「忌館」がいまいちに思えた自分ですが、この「作者不詳 ミステリ作家の読む本」は、作者お得意の怪異が存在しなくても、まったく問題ならないくらいに面白い作品でした。まあ、怪異があるからこその本作ともいえるのでしょうが、怖さという点では「忌館」の方がいくらか上だったような気がします。解説を読むと、続く「蛇棺葬」「百蛇堂 怪談作家の語る話」が怖いように見受けられるので、今年の刊行を楽しみにして待ちたいと思います(別に怖いのが好きなわけじゃないけれど)。

 よくよく考えると、「忌館」と「作者不詳」は同じパターンが続いているので、「蛇棺葬」「百蛇堂 怪談作家の語る話」も似たような展開になるんだろうか・・・・・・。

 さて、次こそは「悪の教典」を、と考えていたところですが、病院に持ち込むには嵩張るサイズですし、ホラー作品が連続するのは精神衛生上よろしくないような気もするので、健康的に山田風太郎作品を読もうかな。

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「忍びの卍」

 「忍びの卍」再読。

 他の、複数VS複数の忍法帖とは趣を異にし、むしろ短編の構想を長編に仕立て上げたような本作ですが、これがまた面白く、普段なら泡のように消えていく忍法使い達の飽くなき探究心が、時にはユーモラスに時には残酷に、風太郎の冴え渡る筆によって描かれ、大陰謀の車輪を回していくのです。

 【山田風太郎ベストコレクション】の本作の帯には、せがわまさき先生の推薦文として、

 ”読むたびに思う。忍法帖って「絵」だよなぁ・・・と。”

 と書かれており、私自身も常々そう感じることが多いのですが、本作の中でもっとも「絵」としての完成度が高いのは、やはり、ラストの雪が霏々として降りしきる庭のシーンでしょう。

 登場人物が少ない割りに感情移入がしやすい人物がいないのもこの作品の特徴のひとつといえます。それは、「大義、親を滅す」という任務に囚われた人々の悲愴感から由来するものでしょうか。

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「モンスターハンターP3rd」②

Photo  ゲームの話じゃありませんが、ココイチでグランドマザーカレーを注文すると当たる、例の「モンスターハンター3rd」コラボスプーンをGET! ヽ(´▽`)/

 ちなみに2皿目の幸運でした。

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【山風短】第三幕「青春探偵団」第一話

 「青春探偵団」は、【廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全】の第10巻として刊行された際、当然のごとく購入して読み始めたものでしたが、中途で頓挫してしまった一冊でもあります。

 風太郎作品で途中で放り投げたのは、いまのところこれと「忍者黒白草紙」のみで、「忍者黒白草紙」は「アイゼンファウスト」の魅力をもってしても未だ再読に興が乗らないところがあり、今回せがわまさき先生の【山風短】第三幕開始によって、ようやく「青春探偵団」の全読破に至る次第となりました。

 再読には光文社の【山田風太郎ミステリ傑作選6・ユーモア篇】所収の「青春探偵団」を選びましたが、解説を見て驚いたのは、この「ユーモア篇」に収められている作品の多くが忍法帖シリーズ前期の執筆時期と重なっていたことです。

 「青春探偵団」においては「甲賀忍法帖」とぴったり合致しています。

 文章だけ見てしまえば、「青春探偵団」はこの現在に読んでいかにも古い印象を受けるのですが、それに対しての「甲賀忍法帖」の”新しさ”って、いったいなんなんでしょう? それは忍法帖シリーズの表現の独自・普遍性が際立っていることが一番の要因のように思われるのですが、冷静に考えれば、「青春探偵団」が執筆当時の”現代”であったことのほうが、はるかに大きな影響を与えているのでしょう。

 忍法帖シリーズの、主だった舞台である江戸時代は、現在からしたらはるかにファンタジーな世界を包括した時代に間違いはないのですから。

 とはいいましても、「青春探偵団」を読み始めてみれば、これはこれで面白き読み物なのです。【山風短】第三幕に取り上げられたのは、全六話中のまだ一話にすぎなく、なぜあえて「砂の城」を選択したか、というところに興味は集中するのは仕方のないところで、ただ全編を読み終えた今となっては、せがわ先生は「青春探偵団」の再構築を確実にしておられるということが、はっきりと理解できました。

 「(なにもかも)古いなあ・・・・・」

 などと思いつつ読むのが、「青春探偵団」のある意味正しい読み方かもしれません。

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「妖説太閤記」

 角川文庫【山田風太郎ベストコレクション】にて、「妖説太閤記」を読了。

 ――これも、十数年ぶりの再読となります。事故のリハビリで、通院中にゆっくり読んでいこう、と考えていたものですが、あまりに面白くて、上・下巻を1週間ほどで読みきりました。

 以前に読んでから相当月日が経っており、他の作家の「太閤記」にも手をつけず、むしろ戦国時代についての知識が薄かったことも幸いしたようです。

 これは、人にはあまり薦められないような「太閤記」ではありますが、抜群に面白い歴史小説と言えます。この「妖説太閤記」と同じような余韻をもつ風太郎歴史小説というと、「魔軍の通過」がこれに該当すると思うのですが、なぜかしら「風来忍法帖」が胸をよぎったのでした。

 時代背景は、まさに豊臣政権の絶頂期、武蔵野の野をかける不羈奔放な香具師たちの幻影と、荒野を駆ける少年・秀吉の姿が、いみじくも重なり合って思い起こされるせいでしょうか。

 とはいえ、この作品の秀吉にはまったく愛着が湧かないですがね(笑)。

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