魚歌水心
改めまして、ヘロヘロQカムパニー第25回公演「魔界転生」の感想です。
・物語の構成は、大部分深作版「魔界転生」に師事をとっているようでしたが、平山版「魔界転生」の台詞も幾分見受けられました。柳生衆の人数削減や、転生衆のリストラ(今回は、またしてもというべきか、柳生如雲斎でした)はやむを得ないこととしても、本作品は紛れもなく原作版「魔界転生」と新旧映画版のハイブリッド作品となっています。
とくに第一幕の密度と興奮は尋常なレベルではなく、後ろの席から「すごーい」という声が漏れたのとほぼ同等の感想を抱きました。第一幕と第二幕のつなぎが、また舞台ならではの演出で、柳生十兵衛と柳生(自称)七人衆・娘三人と、天草四郎を筆頭とする転生衆が揃い踏みして後編の予告みたいな画を作ってくれたのは、本当に格好よかったです。
・主役の柳生十兵衛を演じた関さんは、「戦国BASARA」の石田三成の声のイメージが大きかったため、最初十兵衛役としては声が若すぎるのでは――と思っていたのですが、全然そんなことはなく、剣豪としての資質とユーモアとを兼ね備えた原作版柳生十兵衛の性格にうまくマッチしていたと思います。
・舞台の仕掛けとしては、回転するセットとスクリーンがうまく連動していて、G2版「魔界転生」で観た以上の仕掛けはなかなかできないのではないか、という不安を一掃してくれました。舟島での宮本武蔵との対決ではスポットライトを太陽光に見立てたり、また、田宮坊太郎・荒木又右衛門・天草四郎戦ではアニメーション的な殺陣を披露してくれたりで、内心「いいぞ、もっとやれ!」と叫んだくらいです(笑)。まったく、ヘロQ版「魔界転生」の本質はアニメーション的なエンタテイメントといってもいいのではないでしょうか。
・柳生十兵衛がクララお品の背中に筆で文字を書こうとしていた際、筆がぬけなくなって、仕方がないから指で書こう、問題ない、という流れになり、あれはアクシデントだったので咄嗟にアドリブで切り抜けたのでしょうけれど、これも生舞台の醍醐味です。
・ちなみに座席は14列目でだいぶ後方だったのですが、運良く花道の真横で役者さんたちが横を通り抜けるたびにワクワクしてしまいました。武蔵が間近で見れて感無量。そういえば、転生衆の衣装が皆煌びやかでもっと細部が見たかったのに、パンフレットにはその衣装をまとった写真が載っていなくて、ちょっと残念でした。まあ、DVD発売されたら買うと思うのでそん時に見直せばいいか・・・・・・。
・天草四郎役の浪川さんは、イタリアを微塵も感じさせぬ熱演で最後まで天草四郎を演じきってくださいました。一緒に観劇した嫁は声優さんオタではありませんが、「ヘタリア」は大好物なので、イタリアの顔がちらつかないでよかったw、と申しております。
・関口柔心が転生衆に屠られるシーンで、「相手は無手だぞ」、「お名前を」「宮本武蔵」の名台詞があったのは原作ファンとしても嬉しかったです。今回は前述したとおり深作版が脚本の根幹をなしている部分が多かったと思いますので、宝蔵院胤舜が柳生但馬守に斬られたり、転生衆を破る唯一の方策が村正とその息子の鍛えた妖刀だったりで、「そのまんまかよ!」とツッコミを入れたくなるときもありまして、それだからなおのこと原作準拠の台詞が出てくると、「おお!」と胸熱になっちゃうんですよねえ。
ですから、パンフレットにも紹介されていましたが、この舞台で「魔界転生」を知ったという人、タイトルは聞いたことあるけど読んだことはない、という人には是非原作を手にとってもらいたいものです。そして、どうぞ、「エッ!?」と驚いてください。
・その原作は終始凄惨な物語なのですが、本作は転生衆サイドの鬼畜っぷりと柳生衆サイドのコメディパートとのバランスがよく取れていたと思います。以上、長々と書き連ねてきましたが、私の大好きな山田風太郎先生のこの「魔界転生」を、このような重厚かつ絢爛なエンタテイメント作品に仕上げてくださいましたヘロヘロQカムパニー座長の関智一氏とすべての出演者、スタッフの方々に感謝の意を表したいと思います。
本当にありがとうございました!
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