書籍・雑誌

「竹島御免状」①

 荒山徹著「竹島御免状」を読み始める。

 ――噂には聞いていましたが、山田風太郎先生の「魔界転生」を、”歴史的にあった”事として荒山ワールドに取り込んでしまうというアクロバティックな行為に、まず驚嘆せざるをえません。

 たぶん、荒山先生は、風太郎ワールドでの十兵衛の最期を描いた「柳生十兵衛死す」がお気に召さなかったに違いなく(そもそも「十兵衛死す」は、「柳生忍法帖」~「魔界転生」に繋がる柳生十兵衛三部作の完結篇という扱い方をされてはいますが、主人公十兵衛の性格や設定に前二作との脈絡がなく、まったく別世界の出来事として見たほうがよい)、それならばいっそ自分が、「十兵衛死す」以上に相応しい、”本当の”柳生十兵衛の最期を書いてやろう、という気持ちで筆を執ったのだろうと想像してしまうのです。

 それは、非常に興味のある話でもあり、また、ある種不安を掻き立てられずにはいられない話でもあります。不安とは、いくら「魔界転生」の後日譚と謳ったところで、鎌倉東慶寺の一件を持ち上げている以上(「柳生忍法帖」にあらず、「柳生薔薇剣」での一件)、あくまでも荒山ワールドでの延長とみなさなければいけないからです。

 まあ、まだ最初の数章を読んだばかりなので、本当に本作で柳生十兵衛が死ぬのかどうかすら、今の時点では判然としないのですが・・・・・・この先明らかにされるであろう、さる藩内で繰り広げられる幻闘と、二度目の荒木又右衛門との対決の帰趨がどうなるのか、「魔界転生」を愛読する者として、注目していきたいと思います。

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「サラン 哀しみを越えて」

 荒山徹著「サラン・故郷忘じたく候」が手に入ったので、早速読んでみることに。

 【あちこちでおびただしい篝火が燃えていたのは、月のない朔日の夜であったせいではない。

 月はなかったが、五月である。満天に銀砂を撒き散らしたように無数の星が輝いている。その下で、夕刻に進駐してきた倭軍の一部隊が大っぴらに篝火を燃やしているのは、むろん朝鮮側からの反撃を警戒してのことであったろう。】

 冒頭のこの一文を読むだけで、作者の意図が伝わってきて、鳥肌が立つ思いです。すなわち、これは山田風太郎「魔界転生」の冒頭と、ほぼそっくり同じだから。

 【あちこちでおびただしい篝火が燃えていたのは、月のない朔日の夜であったせいではない。

 月はなかったが、三月である。どんよりと垂れこめた雲には、いぶし銀のようなひかりがあった。その下で、各陣営が大っぴらに篝火を燃やしていたのは、むろんいくさが終わったからである。】

 島原の乱収束直後の場面から始まる「魔界転生」と、その乱の首魁となる2人の人物の登場を示して終わる「サラン 哀しみを越えて」――読み終えるまでは、こんなにも深く、静かで、ひたむきな復讐の情念がこもっている内容になっているとは思いも寄りませんでした。

 わたしゃー、てっきり、「柳生薔薇剣」や「柳生百合剣」のようなノリで、「魔界転生」の前日譚が描かれていると思っていたもので・・・。

 「魔界転生」との直接のつながりを示す登場人物が他にも居て、それはここでは触れないことにしますけれど、山田風太郎ファンならば、一読の価値はある作品となっています。

 【サラン、サラン、わが愛は・・・・・・

 ・・・・・・サラン、サラン、哀しみを越えて、まかいに転び生まれて候・・・・・・

 そのタイトルの意味に、誰もが驚愕することでしょう。

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「魔界転生」異聞

 荒山徹先生の「竹島御免状」(←なかなかのタイトルです)が、山田風太郎先生の「魔界転生」後日譚だという噂を聞きつけ、早速購入に走りました。あくまでパロディ的な意味なんでしょうけれど、荒山作品には文章そのものをパロった箇所も多く見受けられるので、気づいたときのニヤニヤ感が止まりません。

 また、「魔界転生」の前日譚とも評される短編集「サラン・故郷忘じたく候」は、近所の書店には置いてなかったので、もう少し探してみてから、ネットで注文することにでもします。

 ――最近、読書するのが楽しいな。

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「女王様と私」

 歌野晶午著「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」読後のもやもや感を抱えたまま、続編となる「密室殺人ゲーム 2.0」に取り組む前に、ワンクッション入れとこうという気になり、同じ作者の「女王様と私」をチョイスしてみました。

 タイトルだけ見たら、もっと後にしてもよい作品だったと思うのですが、タイトルから内容が計り知れないという事情もあって、この作品を読もうと考えたのかもしれません。出版社も不明のまま、ただ歌野晶午の名前を頼りに「女王様と私」を探し出しました。

 結果、購入したその日のうちに、一気に読み終えることに――こういうことって、振り返ってみても、そうそうないことだなあ、と我ながら驚きます。

 それは、連休の一日目に読み始め、翌日も休みでゆっくりできるという気兼ねのなさがあったせいとも思いますが、やはり根幹として、「女王様と私」というストーリーにのめりこむことが出来たからでしょう。

 いや、本当に、3分の2くらい読み進めた時点では、もしかして作者の最高傑作? と疑い始めていたくらいです。ネタばれになるので、物語のプロットやつっこみどころを記すのは控えることにしますが、世間一般の書評はともかく、おそらく、自分の中では、長く記憶に残る作品となりそうです。

 さて、本文中の台詞のやりとりに、

 「・・・・・・ええと、今日はたしか木曜日ですよね」

 「お。『うたばん』見なきゃ」

 というのがあって、とんねるずのタカさんファンの嫁に見せたところ、なにやら興奮していましたが、特にこれ以上キミの好奇心を満足させることは書いていない、と申し送りしました。

 「それ、ラノベ?」

 とも聞かれましたが、俺がラノベを読むわけがないでしょうがッ。

 とはいえ、これって、ラノベの定義は知らず、ある種歌野晶午によるラノベ、と呼んでも差し支えないのかも・・・・・・。

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「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」

 忍城を舞台にした時代小説を2冊読んだのを機に、「風来忍法帖」を再読しようかと思い立ったのですが、「シャーロック・ホームズ 最後の解決」「紅蓮の狼」と一緒に購入した、歌野晶午著「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」を先に片付けることにしました。

 昨年、講談社ノベルスで刊行された「密室殺人ゲーム 2.0」を手にとって以来、無性に気になっていた作品で、ちょうど文庫化された「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」を購入したものです。

 とにかく設定が飛んでいます。

 はっきりいってしまえば、道徳も倫理もない有害図書とも分類すべき内容ですが、それだけに、深夜枠でドラマ化されればたいそう面白いに違いない、と想像をめぐらせていたのですが、結末に近づくにつれ、さすがにこれ、映像化できないわ、と認識を改めることになりました。

 それは、歌野晶午の真骨頂ともいうべきものです。

 歌野作品は、これを含めてまだ3冊しか読んでいないのですが、それぞれ趣が異なり、多彩なアイデアの持ち主だな、という印象が強くなってきました。

 だけどまあ、最初に読んだのがこの「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」でなく、だいたいの人がそうであるように、「葉桜の季節に君を想うということ」であったことは僥倖で、本書をまず手にとったと仮定した場合、もうこんな頭のおかしな発想をする作家の本は二度と読まない、という結論に至らなかったとも言い切れません。

 ――ああ、そういえば困ったことがひとつ。これを読み終えたら「風来忍法帖」を、と決めていたのに、こんなにも私の心の中の衝動を引き起こした作品の続編を、すぐにでも買いに行かなければ気持ちが収まりそうにありません!

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忍城戦記・2作

 忍城を題材にとりあつかったものを、続けて2作品読みました。

 1作目は「のぼうの城」。非常に読みやすい文体なので、歴史・時代物初めて、という読者はすんなりと受け入れられるのではないでしょうか。

 最後まで読んでみると、成田長親が主役であったのかというと、どうもそうではないような気がして、攻め方の石田三成と、守り方の成田長親の人柄や価値観を対比してこの物語を見るとなれば、もっと双方の掘り下げた人物描写がエピソードがあったほうが、満足できたかもしれません。

 もともとシナリオとして書いたものを小説として書き起こしたようですから、あまり深い意図はないのかもしれませんが、それならばいっそそのまま映画化してしまえばよかったのに、と思います。完全映像化されるならば、見せ場は多い映画になりそうですが、この小説自体のエンターテイメントとしての醍醐味は、長親の開戦の口上と、城の明け渡し場面くらいかなあ。

 2作目は、宮本昌孝著「紅蓮の狼」。こちら、メインは忍城の攻防戦ではなく、甲斐姫の幼少から晩年にかけての物語となっていますが、ある種お伽噺的なエピソードが、説得力のある筆致で語られていて、「のぼうの城」と同様に一気に読みきることができました。

 この作者に関しては「剣豪将軍義輝」でその名前を見知っていたくらいですが、他の作品にも手をつけてみてもいいかな、と感じ入った次第です。

 あ、この忍城を扱った2作品の甲斐姫のビジュアルについては、コーエーの「戦国無双3」のあれで、割と補完できるものと考えます。

 

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「のぼうの城」

 いつか読まねばならんなあ、と考えていた和田竜著「のぼうの城」の購入に踏み切ったのを契機に、埼玉県行田市の忍城址に行ってきました。

 ――私からしたら、「風来忍法帖」の舞台、という意味合いが大きいわけですが。

 「のぼうの城」の、やけに派手な金ぴかの帯に、”映画化決定!”とでかでかと謳われていたので、地元もさぞや盛り上がっているであろうと勢い込んで訪れてみたものですが、まだ時期的に浮かれるのはちょっと早かったようです。

 これから、キャストやスタッフが決まっていくにつれて、徐々にお祭りムードになっていくんでしょうねえ。

 うーん、うらやましい。またしばらくしたら行ってみようかしら。

 ”甲斐姫饅頭”とか、お土産で売り出してくれれば、きっと買って帰ります。

 「のぼうの城」自体は、まだ最初の数章に手をかけたばかりです。甲斐姫が出てきたばかりのところ。作品そのものは読みやすいな、と思うのですが、「風来忍法帖」の麻也姫の印象が強いので、いろいろと比較してしまいそう。

 でも、こちらの主役はあくまで成田長親のようなので、この人物を中心にどう戦局が変化していくのか、読み進めるのが楽しみです(そういえば、何かのインタビューで読んだ気がするのですが、「のぼうの城」って、もともと映画化のために準備していた脚本を小説化したんじゃなかったでしたっけ?)。 

 さて、帰り道、「馬車道」という地元にはないレストランがあったのですが、嫁が鼻息を荒くして「袴! 袴!」というので、食事をとって帰宅することにしました。ここのお店のウエイトレスさんが、そうした格好をしているといった意味だったようで、料理を運んでくるウエイトレスさんを見つけては、頑張って観察しようとする嫁の姿に、ひとかたならぬ戦慄を覚えたものです。

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「THE FINAL SOLUTION」

 久しぶりに翻訳物ミステリを読みました。

 原題が、「THE FINAL SOLUTION」というのですが、翻訳されるにあたって、「シャーロック・ホームズ 最後の解決」というタイトルがつけられています。

 ――っていうか、この邦題、壮絶なネタばれじゃね?

 もちろん、ホームズものとわかったからこそ、購入した部分もあるのですが、とある事件の解決に乗り出すサウス・ダウンズの年老いた養蜂家が、実は世界一有名な諮問探偵であったという真実こそが、この小説の肝であったような気がするのです。

 実際、作中で語られる事件は、さほど劇的でも、謎めいてもおらず、ホームズの名推理が発揮されるような場面もなく、オウムの歌う数字の意味も、曖昧模糊として、至極中途半端な印象を受けました。

 ホームズ物と知らなければ手に取ることもなかったでしょうが、知って読めば満足感が得られない、実に困った小説なのです。著者のマイケル・シェイボンは、「ユダヤ警官同盟」という作品で多数の賞をとったくらいですから、それは素晴らしい作家なのでしょうけれども。

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「前巷説百物語」

 京極夏彦著「前巷説百物語」読了。

 ――百物語はじまりの物語ということです。

 このシリーズ、薀蓄が少ない分、京極堂シリーズより読みやすいのですが、それだけに少し物足りない感じもします。何が言いたいかというと、京極堂シリーズの新刊が早く読みたいな、と(新刊「数えずの井戸」は買ってしまいましたけど)。

 読んでる最中、アニメ版の「巷説百物語」がむくむくと気になりだし、中古でDVD-BOXを購入しました。レンタルで2話まで観ていたことを思い出し、独特の世界観を表現するのに、独特のキャラデザインと美術設定もまた良し、と考えることにしていたものの、やっぱり原作と比べると脚本に深みが足りないように感じました。せめて作画がもそっと統一されていればなあ、というのが本音です。

 

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「厭魅の如き憑くもの」

 三津田信三著「厭魅の如き憑くもの」読了。

 年末~年始にかけて、一所懸命読むような類の本ではないとは思いますが、神々櫛村に起こった怪事件の全容と、結末が知りたくて、なにはさておき読みきりました。

 とても人間の仕業とはいえない怪現象のいくつかが、合理的かつ論理的に説明されていく過程というものは、ある種、興を削がれる作業になるおそれもありますが、この作品を始まりとする刀城言耶シリーズは、それでもなお説明のつかない不可解な現象はある、という部分を含みつつ、語られていくようです。そうした人知の及ばないホラー要素が、横溝正史や京極夏彦の代表的な作品の構成と大きく違うところでしょうか。

 ――世の中には、不思議なことなど何も無いのだよ

 では決してないのです。

 それにしても、刀城言耶が数多の怪事件を解決していく物語譚の、最初の事件としてこの作品があるならば、彼の今後の活躍には、きっと注目せざるをえないような推理の披露でありましたが、結論としてまわりくどく、そのために少しばかりやられたという感じが薄れたような気がするのは、私だけではないと思います。

 仕掛けを理解して、再度全体を通してみれば、とても面白かったと言えますが。

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