Y十M

「Y十M」最終話・雲とへだつ

 「Y十M~柳生忍法帖~」最後の感想となります。今まで「Y十M」について書いてきた内容を読み返すに、思い入れが強すぎちゃって、まとまりがなくなりそうなので、箇条書きでさらっと。

・『師たる快僧と、剣聖たる父』との問答がアツい

 沢庵・「この城で、牢まで入って苦労したものを」→但馬・「ではその牢屋に入れて窮命してやろうか」のやりとりがなかったのは残念ですが・・・この場面での沢庵の別のセリフ「命のやりとりでは、せがれの方がおやじよりだいぶ強いのじゃないか」を見ると、十兵衛と但馬守を闘わせようという発想が、このときすでに山田風太郎の頭の中に浮かんでいたのではなかろうかと勘繰ってしまいます(結果論だけど)。

・それにしても沢庵っていい坊主だわ(「バガボンド」を読んでみても)。で、いつ死んだのかちょっと気になって調べてみたら、1646年1月27日(正保2年12月11日)となっていました。・・・って、沢庵がもう少し長生きしていたら、「魔界転生」でなんらかの役割を持って登場していた可能性がありますね。

・十兵衛のギャグ走り(笑)

・このあと逃げようとしている芦名衆の一人をボコり、オリジナル展開を期待させ、堀の女(プラスおとね)たちとのやりとりの後、別れを告げる場面で、鶯の七郎が再登場したのは嬉しい演出でした。しかも、十兵衛と同じ片目になってるし。

 事情を知らないお千絵とお笛が「?」「?」としているのも芸が細かいです。このまま女たちのもとへ帰って、東慶寺で飼われるという展開もありかな、とも思ったのですが、束縛されずに大空を飛び回っているほうが、十兵衛の幼名をつけられた鶯にはぴったりなのかもしれません。

・陰惨な状況の多い「柳生忍法帖」でしたが、ともあれ大願を果たし、会津には平和が訪れます。原作では、十兵衛が「では、さらばだ!」と馬に鞭をあててその場を去ると、馬上でうなだれる8人の女の描写があり、いくぶん切ないお別れとなっていましたが、「Y十M」の別れの場面は、明るく救いがあり、大好きなシーンとなりました。

・「もうひとり―――おれだけが弔ってやらねばならぬ女がある」

 蒼空に映る在りし人の姿は、漫画では王道と言ってよい表現方法だと思いますが、まさか後姿でくるとは。正直、やられた気分です。

・前に一度書いたことがありますが、もう一度だけ言わせてください。

 「せがわ先生、ありがとう!」

 

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「Y十M」最終話

 とりあえず、せがわ先生、お疲れ様でした! ぴったり100話で完結したのが、個人的には超・気持ちがいいです(笑)。

 最終回の内容についての感想は、またあらためて書くとして、ラストページの編集部コメントみたいなのを読む限り、せがわ先生による「魔界転生」漫画化のフラグが立ったと見てよいのでしょうか? どうあれ、次回作に取りかかるには、まだまだ間が空くでしょうけれど・・・。今後の活動に注目、ですね~。

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「Y十M」第99話

 とても清々しいのです。

 そう、「柳生忍法帖」は、他の忍法帖と比較してみても引けを取らないくらい大層な数の死人や犠牲者が出ているにも関わらず、基本的に大団円なのです。

 復讐を誓った堀の女たちが、一人も欠けることなく本懐を遂げることは、全滅エンドの多い忍法帖シリーズの中では特例と言ってもいいくらいで、だから、「柳生忍法帖」は、こうも明るくて清々しいのです(続編と言える「魔界転生」でも、娘3人と弥太郎が生き残りますが、「柳生忍法帖」のラストの印象とはほど遠く、忍法帖特有の空虚さに包まれているのは、主人公である十兵衛の苦悩・煩悶のせいかもしれません)。

 いよいよ、「Y十M」も残すところあと1話のみとなりました。

 「柳生忍法帖」の原題である「尼寺五十万石」を、今話の章題に持ってきたように(最終回の章題が”アレ”として、当初からの予定通りだったのでしょうか)、原作ファンが拍手喝采をしたくなるような最終回を、期待してしまってもいいですよね。

 

 

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「魔界転生」への架け橋

 このブログのテンプレートが、桜のままなのは、「Y十M」内の季節がまだ春真っ盛りだからで、別に手抜きではありません。「Y十M」が完結したら、変更する予定です。

 さてその「Y十M」ですが、完結まであと2回というところなのですが、原作の残り枚数を考えるに、いままでのペースだとちょっとページがあまりそうな気がしませんか。エピローグでオリジナルエピソードを少しでもからめてくれたら嬉しいですねえ。

 あとはしつこいようですけど、「魔界転生」に繋がる終わり方とか、やっぱり期待してしまいます。木村助九郎も顔見せしたことだし、いきなり片手片足を斬られた助九郎が柳生城に逃げ込んでくるシーンから始まって、転生衆と十兵衛が門を挟んで対峙するっていう画面で終わるのも夢があっていいなあ。

 ”天草四郎が聞いた。

 「せっかく『Y十M~柳生忍法帖』が完結しようとしておることじゃ。一応続きを見たかろうと思って聞いたまでだ」

 「・・・・・・見たい」

 「・・・・・・見たいのう」

 と、但馬守と如雲斎はうなずき合った。”

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「Y十M」第98話

 寛永20年(1643年)の春、尼寺の大虐殺に端を発した未曾有の復讐劇は、1年の時を経て決着の瞬間を迎えようとしています。

 この年、

 柳生十兵衛36歳。

 柳生宗矩72歳。

 木村助九郎58歳。

 「魔界転生」において転生衆が揃う正保3年(1646年)まで、あとわずか3年。考えてみればこのときすでに、蘇った天草四郎や荒木又右衛門が、森宗意のもと密かに地下に潜っていた時期なのですね。

 なんか、わくわくしてきました。

 

 

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「Y十M」第97話

 柳生十兵衛VS漆戸虹七郎。

 ほとんどセリフのない今話での2人の一騎打ちは、まさに圧巻の一言。

 最終回を目前にして、せがわまさきの「Y十M」は、ついに原作を凌ぐ機会を得たと言っても、言い過ぎではないでしょう。

 ・・・えらそうですいません。

 本当に嬉しかったんです。

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「Y十M」第96話

 味方にすればこれほど頼もしい人物もいないが、ひとたび敵に回せば容赦のない男、それが柳生十兵衛三厳。

 ・・・さて、今回は見どころが二つあるはずなのでした。

 ひとつは、回転式という奇態なギミックをほどこされた磔柱に、全裸で縛りつけられて、芦名衆にぐるぐる回される五人の堀の女たち(こちらは原作の描写とは違い、上半身はあらわになりながらも、白装束に身を包まれるというソフトな表現に変更されていましたが)。それを指図して哄笑するのは、原作では虹七郎なのですが、こちらも明成に変更となっているのは、どこまでも憎たらしいこのバカ大名の滑稽さを、最後の最後まで読者に印象付けるためでしょうか。

 そして、もうひとつの見せ場は、人間の腕をもって書かれた、『蛇の目はひとつ』の大文字。原作では大手門の柱に書いていることになっているのですが、「Y十M」ではなにやら塀の一角に書かれていますな。しかも虹七郎との距離が、めっちゃ近いし。なんか、ものすごく絵的に映える場面であろうと思ってわくわくしていたのですが、はからずも和やかな気分に。

 そして数コマしか出番のない十兵衛先生でしたが、ラストページの大コマまで顔を見せないという演出と、気迫のこもった表情には圧倒されました。よくよく考えれば、「柳生忍法帖」と「魔界転生」を通して、柳生十兵衛がこんな顔をするのは、実はそんなに無い事なのです・・・。

 いよいよ最終回が迫ってきましたが、このペースだと・・・あと2~3回くらいかな? ちょうど100話まで、あと残すは4話ばかりなので、オリジナルの後日譚を含めて、キリのいいところまでいってもらいたいというのが希望ですが、あとはもう流れに身をまかせるしかありません。

 そして、続編として「魔界転生」をやってくれとは言わないけれど、「魔界転生」をにおわす終わり方をしてくれれば、大満足だなあ。数年後、柳生城でごろごろしている十兵衛のもとに、敵討ち志願の娘が訪れてきた・・・とかね。

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呼ぶ声

 「Y十M」がもしアニメ化されるとして、柳生十兵衛の声優さんは誰がいいかなーと考えてみたりするのですが、いまのところ大塚明夫さんくらいしか思い浮かびません。で、そうなると、芦名銅伯役は大塚周夫さん以外はありえないでしょう(柳生但馬守役でも可)。

 ・・・ただ単に、「魔界転生」の木村助九郎の遺言を受けて、「そうは言うがな、爺。頼みが大きすぎるよ(←原作のセリフとはちょっと違うけど)」というセリフを大塚明夫ボイスで聞いてみたい、というだけなのですが(笑)。

 「MGS4」のためだけにPS3が本気で欲しいです。スネークーーーーー!!。

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「Y十M」第91話

 処刑当日。獣心香の魔力も消えうせて、おゆらの方は本人の申告通り正気に。芦名の胤を宿す娘を十兵衛の手から取り戻すべく、悠然と地下祭壇に赴く銅伯はあくまで強気に。

 いきなりですが、マイフェイバリット忍法帖姫さまベスト10です。

・1位 麻也姫(風来忍法帖)

・2位 鞠姫(自来也忍法帖)

・3位 千姫(くの一忍法帖)

・4位 旗姫(忍法剣士伝)

・5位 鮎姫(江戸忍法帖)

・6位 右京太夫(伊賀忍法帖)

・7位 マリア天姫(外道忍法帖)

・8位 村雨(忍法八犬伝)

・9位 牢姫(忍法創世記)

 ・・・9人しか思い浮かびません。印象に残っている姫さまといえば、やはり長編に限られるし、いわゆるヒロインという立場の人物は省いたので、こんなところでしょうか。麻也姫はぶっちぎりの1位として、2位~5位は僅差、その下は強いて言えば性格や役割の問題です。

 さてなぜこんなランキングをつけたかというと、「Y十M」でおゆらの方の株がぐんと上がったので、ヒロインという括りでランクをつけると、どのくらいに位置するのか確認したかったわけなのですが・・・この順序でいくと、5位の鮎姫と6位の右京太夫の中間あたりかなあ(他のヒロインを付け加えると、順位的にはもっと下になると思います)。

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「Y十M」第90話

 遅ればせながら、「Y十M」第90話・『天道魔道』の回です(このペースからすると、100話の大台に乗って完結か?)。

 さて、正直言って、この辺りのくだりがここまでコメディ色の強いものになりうるとは、露ほども思っていませんでした(笑)。本来ならば、敵味方の苦悩・焦燥・戸惑いが色濃く描写されるべき内容なのでしょうが、それもこれもおゆらの方の屈託のない痴態のせいで・・・。おゆらの取り扱いに閉口する十兵衛もそうですが、わざわざ磔柱の出来上がった本数を伝えに来る虹七郎の登場場面はギャグ以外のなにものでもありません。

 原作を読んでいた時にはさほど感じなかったおゆらの、物語の展開を左右するキーマンとしての役割が、「Y十M」では異常なほどに誇張されているような気がして、思い返してみれば、おゆらが初登場したあのとき、「Y十M」は従来のバージョン1.0からバージョン1.5に大きく変貌を遂げていたのかもしれません。これは皮肉とか、けなしているという訳ではなく、原作至上主義者からの、「Y十M」に対する最大の賛辞です。

 ここまできてしまうと、俄然、せがわまさきの筆による「魔界転生」も見たくなってしまうわけなのですが、注目点はあの重厚緻密にして暗い原作を、原作から逸脱せずにどう漫画向きにアレンジするかということと、転生する剣豪=死者を、せがわ先生がどう描けるかということでしょう。まあ、いまこの心配をしても始まらないので、まずは残り少なくなった「Y十M」をラストまでしっかりと描ききっていただきたいです。

 

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